これが日本だったら、「男の子はピンクのマスクをつけない方がいいよ」と言うのだろうか。
ピンクのマスクをつけたらからかわれるのじゃないかと心配する男の子に「男子か女子かに関わらず、ピンクは素敵な色」と蔡英文総統や多くの閣僚がピンクのマスクをつけるパフォーマンスで応じた台湾政府。
選択的夫婦別姓への法改正は、法制審答申が出て24年も実現しないでいるが、首相も法相も後ろ向きの答弁を繰り返している。今年2月の衆院予算委員会でも「選択的夫婦別姓のどこが納得できないのか」という議員の質問に、「国民の意見は分かれており、夫婦の氏が異なることで子への悪影響が生じることを懸念する人も相当数いる」と答弁した安倍首相。
確かにH29年の内閣府世論調査で「子どもにとって好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合は62.6%と過半数だった。答弁に嘘はない。
しかし現在、国際結婚をしている法律婚夫婦、選択的夫婦別姓の法制化を待って婚姻届を出さずにいる事実婚の夫婦、一方が改姓し結婚した後改姓した側が通称使用している法律婚夫婦、いろんな夫婦が別姓で生活している。「こどもにとって好ましくない影響があると思う」という人が多いのなら、その根拠を問い、誤解があるならそれを無くし、別姓が好ましくないと思われないように持っていくことで、こどもが「好ましくない影響を受ける」と思われないようにすることを目指すべきでないのだろうか。
首相が先頭に立って「好ましくない影響がある」と考える人が相当数いることを認めることで、「好ましくない」と考えること自体を容認してはいないだろうか。
大人がすべきことは、自分が差別する側に立たないことを見せることで、こどもにも差別はいけない、と態度で教えることではないだろうか。
この国では真逆だ。こどもへの影響、というよく分からない根拠のない思い込みの存在を認めることで、選択的夫婦別姓に反論しようとしている。こどもを人質にしないでほしい。現在でも法律に則った別姓もあるのに、そうした家庭のこども達は「好ましくない影響下」にいることを首相は放置するのだろうか。
わたしは、ピンクのマスクをして閣僚みんなが並んでみせてくれるような国でこどもを育てたかったと思う。