以前書いたことなのですが(「内閣府の世論調査、設問がなんか変なんですけど」)
2021年9月18日の今、自民党総裁選、そしてその後の総選挙を控えて候補者の立ち位置確認に選択的夫婦別姓に対する態度が大きな話題となっているので、もう一度世論調査の問題点についておさらいしておきたいと思います。
このところほぼ5年ごとに行われている内閣府の夫婦別姓に関する世論調査(最新は2017年)。
質問項目沢山ある中で制度の導入に関する質問。項目と回答の割合%が下です。
(ア)婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない(29.3%)
(イ)夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない(42.5%)
(ウ)夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない(24.4%)
(エ)わからない
(ウ)をよく読んでください。
「婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改める」
この紛らわしい項目が入った所為でこの調査結果が正確に引用できない事になっています。
賛成派は賛成(イ)に通称使用も容認して法改正まで認めて(ウ)いる、と(イ)+(ウ)=66.9%。
反対派は反対(ア)に通称使用しても戸籍同姓の部分は変えない(ウ)、と(ア)+(ウ)=53.7%
と数字を読み、あげくに、反対派は賛成派を嘘つき呼ばわりまでしています(記事では項目の並べ順を世論調査項目と変えてあり、アイウの順が世論調査及び当記事と異なっています。ご注意ください)
この記事で「賛成派が(イ)+(ウ)を賛成というのはウソだ」、というなら、反対派が(ア)+(ウ)の数字を制度に反対としてまとめるのもウソでしょう。
世論調査の結果から言えることは選択的夫婦別姓を可能にする法改正に賛成42.5%と法改正に反対29.3%ではありませんか。
一方、通称使用の限界については国会での答弁でも言われています(2021年4月2日衆院法務委員会、上川陽子法相「旧姓の通称使用では戸籍姓との使い分けが必要となり、旧姓の通称使用の拡大によって社会生活上の不利益の全てが解消されていると言い切れない。」)。また、通称使用自体の国の制度としてそれを進めることの問題点は2021年6月23日の第2次別姓訴訟への最高裁大法廷決定の宮崎・宇賀両裁判官の意見が指摘もされています。
調査項目が賛成、反対、その他、でなく、中間意見にもとれるけれど正確にはそうではない紛らわしい設問が紛れ込んでいるのです。(ウ)の項目、「通称使用で別姓が可能」で「今の制度(婚姻届は夫婦同姓で出す)にそう変更加えない」と一見中庸などちらも立てたような形。けれどそれを本当に使いたい、名前を変えずに生きていきたい人には不利益が解消されるとは言えない形が、さりげなく、さも使えますよという風に、です。
もしどうしても(ウ)の案に対する意見を聞きたいのであれば、
まず、夫婦別姓を推進するための法改正に賛成か反対かを聞き、次に別項目を立ててその改正法案の中身を聞くべきでしょう。
そして、通称使用を選択肢としてあげるなら、通称使用についての今出ている議論、限界、問題点も指摘するべきです。そうしなければ「どこでも」使える通称と現実的には不可能なことを示し通称使用は戸籍姓と同じではないことを隠してごまかしていることになるからです。