2021年12月11日(土)、第15回個々からカフェが開催されました。
講師は、この春「事実婚と夫婦別姓の社会学」を上梓された福岡県立大学人間社会学部専任講師、阪井裕一郎さんです。
コロナ感染が続く中、対面で実施できるのか、すべてオンラインとなるのか、やきもきしながら過ごしてきましたが、なんとか感染の少ない状況が続いたので、実際に福岡から阪井さんをお迎えでき、会場(密を避けるため15名までと限定)とオンラインとの両方で実施することができました。Web参加者の中には、東京などからの、選択的夫婦別姓陳情アクションの活動でよくおみかけする方も入っておられ、士気が上がりました。
普段は裁判のこと、民法のこと、戸籍のことなど、法律的な観点から学ぶことが多いのですが、先生は家族社会学の観点から話をしてくださり、思ってもみない視点もあり、新鮮でした。
現在、法律婚が一般的、事実婚が例外と思う人が多いですが、実は戦前の日本においては内縁などの事実婚が多かったこと、出産して初めて妻とすることもあったことなどはあまり知りませんでした。敗戦後、妻以外の第二、第三夫人など持つことをやめ、一夫一婦制の法律婚をするよう推奨されてきたわけですが、今度は別の理由で事実婚が増えてきたのです。先生はいろんな方にインタビューをされているのですが、私たちも何度か聞いてきたとおり、現在事実婚を選んでいる人の一番の理由はやはり、お互いの名字を変えないため、なのです。「それ以外の理由があるのですか?」と当事者に聞かれるくらいだそうです。
現在の民法では、結婚したいという希望と、どちらかが改姓しなくてはならないということが交換条件となっています。それは明らかにおかしいです。
同じ名字でないと家族の絆がないとか、子どもがかわいそうとかいう意見は、明らかにおかしいのです。
今回のテーマは「心地よく家族は変わる…」というものですが、夫婦の名字以外にも、「家族主義」による様々なミスマッチが起きていることが最後の部分で語られました。空き家が多くなった一方、住居に困っている人たちがいる、一人で暮らすのに不安を抱える高齢者が増加する一方、他人でも良いから同居してくれる誰かを望むシングルの親が数多くいる、望まない妊娠により中絶する人が多くいる一方、不妊に悩み追い込まれながら治療を続ける人が多くいる、などです。非常に大きな話になってしまいますが、と先生は言われましたが、本当に世の中はそのとおりミスマッチに満ちており、夫婦と子供、という単位だけで物事を考える時代は、もう時代遅れではないかと思われます。ガチガチの昔ながらの家族にとらわれているからこそ、窮屈な世の中になっているのです。
心地よい世の中にしていくためには、まだまだこれから社会を、法律含め、変えていかなければならないと、強く感じました。
一時間の講義の後、質疑応答があり、司会者が会場及びオンライン参加者すべてにマイクを順番に回してくださいました。皆さん話したいことが山ほどあり、くすっと笑えるような話もあり、どんどん時間は過ぎていきました。先生はしっかりうなずきながら丁寧に答えてくださり、まさに「心地よい」個個からカフェとなりました。
先生は、何十年も選択的夫婦別姓のため運動してこられた方へのリスペクトも示してくださり、これからも事実婚をしている方などにいろんなことをインタビューして研究していきたいので、ぜひ協力してほしいと言われていました。
双方改姓しなくてすむその選択肢さえ認めない窮屈な民法、その一日でも早い改正につながるのなら、協力は惜しみません。もしインタビューしたいとの連絡がありましたら、ぜひとも皆さん喜んで答えていきましょうね。
(長谷川 満子)